同じ発達障害でも、特性の出方が違う。
兄はアスペルガーが強くて、サイコパスそのままで野性的だ。
僕は、ADHDが強くてサイコパスだが、療育が効いている。
僕は兄を理解出来るから苦しい。
人を寄せ付けない兄なのに僕は寄り添う。
なにが違うのだろう。
兄はもう変わらないのか。
壁が高くて近い。

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【手に入らないとこの世の終わり】

兄弟で障害を持っていると、不都合なことがある。
片方が不安定になっていると、見事に引っ張られてしまうからだ。
家の中では、あっちもピリピリ、こっちもピリピリと火花が散っているようだ。
兄のサイは今とても機嫌が悪い。
目当ての本が手に入らないからだ。

amazonで見ると再入荷予定でまだ先の日時を示している。
だから予約をしておいてやると言っても納得をしない。
どうしても手に入れないと気が済まないのだろう。
思いついたらおしまいだ。
まあいいや、と気持ちを切り替えるのが遅い。
僕もそういうことがあるけれども、サイは本当に酷くてしつこい。

「どこかの本屋にあるかもしれない。」
という思いに囚われてしまう。
僕はあるわけがないだろうと思うのだが、そんなことを言ったところで通じない。
自分の目で確認しないと理解出来ない。
仕方が無いので二人で近所の本屋に探しに行ってみた。
中古の本屋と新品の本屋さんだ。
二つ見れば気が済むだろう。

二人で行動すると非常に目立つ。
僕はキョロキョロと挙動不審だし、サイも忍者のように歩き方がおかしいからだ。
周囲を異常に気にして歩く二人は、迷子にならないように離れ離れにならないようにくっついて歩く。
僕が先頭でサイは僕の後ろにピッタリくっついて歩く。
たまにくっ付きすぎて足を踏まれる。

足を踏まれるだけならいいが、僕が止まるとサイはブレーキが間に合わずに僕にぶつかる。
二人とも人に合わせて歩くことが出来ないから、しょっちゅう身体がぶつかる。
背格好が同じで、二人とも無駄に背が高くてヒョロッとしているせいか、腕も長いので手もぶつかる。
ぶつかるとお互いに驚いてしまう。

まるで絡まりながら歩いているようだ。
そしてお互いに相手の視界を邪魔するポジションを取ってしまう。
うざったくて仕方がない。
特にサイは自分の本を探してもらっているのにも関わらず本屋に入ったとたんにピリピリしだす。
そのピリピリが僕にも伝染して焦り出す。
二人でピリピリしながら本を探す。

作家名やタイトルを何度も口にしながら本を眺めるが目に入ってこない。
サイは
「これは無い雰囲気だ。帰ろう時間の無駄だ。」
と言い始める。
雰囲気であるかないのかわかるのか知らないが、せっかく来たのに探さないで帰るなんてそっちのほうが時間の無駄だと思う。
欲しいなら真剣に探せと言いたくなる。

本屋に入って数分でもうこの有様だ。
二人はピリピリしていて、サイに至ってはもし誰かに身体が当たったらパニックにでもなりそうな勢いだ。
下手に店内を歩かない方がいい。
そう思い僕は本屋の中に設置してある在庫を確認できる機械を探し、サイを納得させようとした。
機械の言うことなら信じるだろう。

しかし、これが大失敗。
サイが
「僕がやる僕がやる。」
としゃしゃり出てきて、あれこれ打ち始めるがうまくいかない。
おまけに「あいうえお」のリストの順番がPCのキーボードと配列が違うので、
文字を探すのに手間取りイライラが最高潮になってしまう。
「使えねー!」
とプリプリ怒り出す。

僕の頭の中は、今すぐ帰りたい。
という思いでいっぱいだ。
サイと一緒に外で行動するのは難しいことなのだ。
余程の猛獣使いでないとおとなしくさせられないだろう。
何度打ち込んでもうまくいかず、せっかく打ち込んでも「全削除」を押してしまい水の泡となり、それでも自分でやらないと気が済まない。

ようやく打ち込んだけれども、在庫はありません、と表示が出てサイはイライラしはじめる。
「けっ、こんな店じゃ売ってねえわ!」
と言い出したので
「そうだね、帰ろう。」
と促しさっさと外に出た。
サイも僕にくっついて外に出る。
サイはいつもこうだ。
自分のものを探してもらっているのに不機嫌になる。

ようし、気が済んだかな?と思えばそうでもない。
結局、古本屋にも行ったがサイは自分じゃ探さない。
僕が一生懸命タイトルをぶつぶつ言いながら本を見ているのに、視線に割り込んできて関係ない話をしはじめる。
僕が本に目をやっていると
「おい無視するな。」
と因縁をつけはじめる。
こいつは何なんだ。

僕は、何とかこらえようこらえよう我慢するんだ、サイの行動は障害の特性なんだからと自分に言い聞かす。
それをあざ笑うかのようにサイは
「なあなあ。」
と本とは違う話を延々としはじめる。
相槌を打たないと怒るし、本が無きゃまた怒るんだろう。
我慢の限界の限界で僕は本屋でおかしくなりそうだった。

脳内では、サイをぶん殴っている。
本当に出来たらどんなにいいだろう。
サイは構わずキーキー言いはじめ、
「せっかく探しに来たのに、時間の無駄だった。僕の時間を返してくれ。」
と文句を言い目がつりあがる。
胸がグツグツと渦巻いて、血が噴き出しそうだ。
ごくんとつばを飲み込んで必死で耐えた。

腕と脚がジリジリとしはじめて、全速力で今すぐダッシュしたくなる。
サイなんて置いて行ってしまえ。
今すぐにこいつから離れないと死にそうだ。
顔を何度も手で拭い僕は耐える。
置き去りにしたら大変なのもわかっている、僕は我慢するしかない。
何の苦行だろう。
いったい何のための苦行なのだろう。

人から離れたい。
なんでもいから一人になりたい。
何も音がしない、何も動かない、何もない世界に一人で居たい。
僕はサイだけじゃない、もう一人の兄や妹と長く居てもこうなってしまう。
刺激が苦手だ。
人間が苦手だ。
穏やかになれる人なんて僕には居ない。
脚がムズムズする。
腕もムズムズする。

本を手に出来なかったサイはこの世の終わりのような顔をしながら、もう一軒見に行ったがやはり本は無く、超不機嫌になって帰宅した。
「お前のために連れて行ったのに、そんな態度はないだろう。」
そう心の中で僕はつぶやいた。
人の善意など、サイには届かない。
それも知っているから僕は言わない。

帰宅後から丸一日たってもサイは不機嫌なまま。
ご飯も食べずに本に執着をしている。
腹が減っているだろうに、と僕はかわいそうに思ってしまうところも呆れるくらいに人がいい。
おまけにマックを買ってきてやるところも馬鹿丸出しだ。
人がいい。
人が良すぎる、放っておけばいいのに放っておけない。

僕は人には親切にしてやるのに、自分のケアは出来ない。
だから今も脚がムズムズしてしんどい。
冷たいところを探して脚を当てたり、叩いたりしてなんとかしのぐ。
寝れなくなって気持ちが悪い。
家族から離れたい時には自分の部屋に帰る。
僅かな時間でも良いからホッとしたい。
それが今の生活なのだ。



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