【兄vs僕】

ああ、厄介だ。
自分の障害でも面倒くさいのに、双子の兄のサイは日々僕を悩ませる。
サイは僕のことなんてお構いなしにあれこれ要求してくる。
僕を試してくる。
サイがアスペルガーだから、サイコパスだから。そんなことはどうでもいいだろう。
僕は、僕に与えられた課題だと思っている。



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兄に手がかかる時間。
それは正直頭に来ることばかりだ。
なんて自分勝手でどうしようもない思考回路なのか呆れる。
しかし、それには原因がある。
サイは嫌がらせをしているわけでもなんでもない。
僕はそれがわかるから困る。
僕だって同じことをするからだ。
そういう脳なんだから、しょうがない。

僕も今のサイのように、酷い有様だった。
そういう時期もあった。
あの頃は僕はどうにかしていたわけでもない。
自分にとっては、いたってまともなのだが、社会に受け入れられなかったり、集団の中で過ごせなかっただけだ。僕はあれからずいぶん勉強をしてきた。
人のこと、親のこと家族のこと。

サイは、勉強してこなかったわけでもない。
今は兄弟で社会に対しての免疫が違ってきてしまったが、ただ発達が遅くてゆっくりで、自分の扉が重くて、もしかしたらその扉が頑丈過ぎて、もうどうにも自分では開けられないだけなんだから。
兄を見ていると僕を見ているようだ。
しかし決定的な違いがある。

僕は底抜けに明るい。
お調子者だろう。
いわゆる陽なのだ。
なにしろおしゃべりだし、興味の範囲も広い。
心がざわざわしていても、外に出すタイプだ。
だからぎゃあぎゃあ煩い。
僕にはADHDという特性があるからかもしれない。
しかし、サイは違う。
まるで逆だ。
陰だ。
心を内に秘めてしまう。

僕らは、陰陽で考えるととてもわかりやすい。
同じ障害を持っていても特性なんて出方は人ぞれぞれだ。
僕はサイがあれこれ僕を困らせても、憎いとも思わない。
むしろ、兄のそのこだわりの強さに驚くばかりだ。
僕ならすぐに飽きてしまうようなことも、兄はしつこく自力でやり遂げるのだから。

僕は、サイに何が出来るのだろう。社会から遠く遠く、離れてしまっている兄に僕は何が出来るのだろう。
手を引っ張って世界に出しても、兄はおかしくなってしまうだろう。
そんなことをしても何も良くはない。
兄には兄なりの生きる場所があるのだから、強制しても仕方がない。
可哀想でも無い。

でも、ひとつだけ、僕と違うことをサイは言った。
まるで、何も感じない顔でサイは言った。
「もし、次に生まれ変わったら、僕は障害無く生まれてみたい。結婚をして、子供を持ってみたい。社会に出て仕事をして給料をもらってみたい。今はそれが出来ないが、だからといってこれも悪くない。」

兄だって、どこかでしっかりわかっているのだと思った。
まるで、人間が順番で役目を果たしているみたいに言った。
悲しい気持ちなんて僕たちにはわからない。
だからこそ、しれっと言える。
僕は、そういう兄に
「ああ、そうだな。でも、僕は次を考えられない。さすがサイだな。」
と素直に褒めた。

そうすると、サイは、ニヤリと笑って嬉しそうにした。
まるで次のことを思いついたことがとってもあたたかくてわくわくするような顔だった。
僕はこの時に思った。
兄は、兄の時間は僕よりもゆっくりだ。
次も含めて、自分を生きている。
僕は今を生きている。
そうしてサイは僕にたくさん言葉をくれる。

時間が時間の経ち方が違う。
羨ましいなとも思った。
僕もサイ、兄のように、自分の時間を生きて見直さなくてはいけないと思った。
「なあ、お前。先のことなんてどうでもいい。結果を見てばかりでは、今をやれなくなる。そういうことばかりだ。生きることはめんどくせえ。めんどくせえから生きるんだ。」

兄の言葉に二人で大笑いした。
僕は
「ああ、そうだ、めんどくせえ。めんどくせえことばっかでうっとうしいな。馬鹿馬鹿しいことが多い。」
兄はフムフム頷いて、
「ああ、そうだ、馬鹿だろう。
人間は馬鹿だからな。だから生きているんだ。
馬鹿でいいってことさ。
生きるってものは馬鹿だから生きるんだ。」

二人は双子だからか、こうやってよくクスクス笑う。
まるで二人だけがわかっているように。
兄は社会ではまるで生きて行けないが、いやそうじゃないかもしれない。
それだけをそこだけを見ていれば、生きて行けないのかもしれないが、何も人間は生活力だけで判断することはないと思った。

兄は僕に力をくれる。
兄が生活が成り立たないのであれば、僕が成り立たせればいい。
僕は人一倍仕事して、兄を生かせばいい。
何故なら、兄は僕にとってなにかと意味のある課題を出してくれるからだ。
原動力だ。
僕にとって兄は必要なのだと、同居するようになってはっきりわかるようになった。

食べ物を散らかし放題の兄。
やりっぱなしの出しっぱなしの兄。
神経質でうるさい兄。
しつこくてこだわりが酷い兄。
生活する上でのことが自力で何にも出来ない兄。
いちいち手間がかかる兄だが、悪いところなんじゃない。
僕にはそれでちょうど良いのだろう。
抵抗せずに僕は兄を受け入れようと思った。

受け入れれば、きっと何かが僕に見えてくるはずだ。
猫はすぐに兄を受け入れて懐いた。
猫を抱く兄の顔はとても優しくとても素直である。
僕が兄のそのままの姿をそのまま受け入れなければ、僕は余計なことで苦しむのだろう。
僕もそのままの自分を受け入れたのだから兄に対してもそうだ。
そうしよう。

兄は相変わらず僕に対してわがまま放題だ。
しかし、引っ越しをしてきた当初よりも影響されなくなってきた。
もちろん兄もそうだろう。
昨日兄は僕に
「フン、飯を食って寝る、それ以外実に暇で仕方がない。
何かをしたいと思うが何がいいかただいま思考中だ。」

そりゃあいいと僕は笑った。
二人で笑った。




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