ツイッター始めてから二回目の七夕を迎えた時のことです。
珍しく、サイくん(双子の兄)と話をしました。

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七夕にみんなで願い事を書いた。
ひとり2枚ずつ短冊を配った。
兄が素直に書くかわからなかったが、これに書いてと知らせるメモとともに、
兄の席に置いておいた。
その短冊はいつの間にか無くなっていた。
僕は仕事のことを書いて、
妹は「お金に困りませんように」とか
素敵な彼氏が…とも書いてあった。

何日か経っても、兄は短冊を書いて寄越さなかった。
わざわざ持って行ったのだから、何かしら書くつもりなのだろう。
急かしてもいけないからと、特に何も言わなかった。
小さい頃、七夕に天の川の話しや、ひこ星とおり姫の伝説を聞いて、
一年の中で唯一、宇宙や星に願いをこめる日なのだと思った。

兄と僕は、宇宙の話が大好きだ。
よく母にねだって、他の星の話しをしてもらった。
本もたくさん持っていた。
兄と二人で覗き込み、宇宙はどうなっているのか想像したりした。
宇宙は無限に広がっていているけど、宇宙の端っこはどうなっている?
もし広がり続けるのなら、大きくなりすぎてしまう。

「まるで風船みたいだな。」
と兄が言う。
僕は、まあるい風船を思い出す。
そして、
「風船のようなら、いつか外側が耐えきれずに割れてしまうんではないか?」
と僕が言う。
兄は、
「外側次第ってことかな。」
とうーむと考え込む。
じゃあ宇宙の寿命を知るなら
外側を知らなきゃわからないじゃないのか。

宇宙の外側宇宙の皮。
風船ならゴムの部分。
ゴムの部分の外には、空気がある。
ゴムが伸びて耐えれなくなると、風船は割れる。
「要するに、ゴムの耐久度と、さらにその空気の部分が問題だ。
もし、無限の耐久度なら、永遠に宇宙は広がり続けるし、
耐久度があるなら。」
僕と兄は顔を見合わせ黙り込んだ。

兄はふざけて
「ドカン!」
と言った。
「そうだよ、そのとおりさ。いつか宇宙は爆発するかもしれないぞ。
そして、何もかも飛び散ってしまうんだ。」
僕はそう言いながら、
宇宙風船説をもっともらしく見せるために、空に手を広げた。
兄はその手を振り払いながら
「いつ?おいそれ、いつなんだよ。」

僕は学者のように口を一文字にし、腕を組んだ。
「さあなあ。明日かもしれないし、明後日かもしれないし。
何億年も後かもしれない。
残念ながら、宇宙風船の強度まで人間は知らないんだよ。」
と言い兄をチラリと見た。
「なんだわかんねえのかよ。宇宙人に聞くしかねえな。」
まったくだと僕も同意した。

兄は、七夕の短冊を渡してから数日後、
テーブルの上に短冊を並べて寄越した。
兄にも七夕の星に願う気持ちがわかったのだろうかと思うと僕は嬉しかった。
二枚ともぎっしりと願い事が書いてある。
丁寧に何回も書き直したのだろうか。
ネットで文字を調べたのか、漢字を使って正確に書いてあった。

その短冊には、
「いろいろな星に行きたい。」
「無限の寿命が欲しい。」
「創造空間を作りたい。」
など、難しい言葉で書いてあった。
兄は、宇宙の果てを知りたいのだろうか。
それとも、星について興味があるのだろうか。
兄は地球の中では、
「外に出て何があるっていうんだ。何もない。面白くない。」

「それよりも宇宙でいろいろな星を知って、
いろいろな考え方とか知恵があることを見たい。
この星(地球)は合わない。
合うところに行きたい。合わせようとも思わない。
探すのもいい。それが駄目なら作るしかない。」
兄は本当に小さい頃からそう言っていた。
その願いを今でもずっと抱き続けている。

「間違えて生まれたんだよ。それか勉強するためか。
地球を見てから、僕は還るんだよ星に。」
そう言う兄はいつも遠くを見ている。
「僕は何故ここに生まれたんだろう。つまらないことばかり、
刺激が煩いばかりの地球は、暇で仕方が無い。」
そう言う兄を僕は、
「まあまあ、もうちょっと付き合ってよ。」

そう宥めている。
七夕で願いを書く兄は真剣だ。本当に叶えて欲しいのだ。
しかし、それを自分で叶えたくとも、
「一身上の都合」で出来ないのだ。
「僕は、この地球は鎖だらけで不快なんだよ。
何もかもが鎖で縛られている。
がんじがらめだよ。
いっそのこと鎖は外せばいいのに。
それがわかってない。」

今まで多くの人々が暮らしてきた地球では、
見えない鎖がはびこり、そしてもう開拓するところが無いくらいだ。
人はうじゃうじゃと生息し道を作っていく。
「道は自分で作るもの。誰かが作った道じゃなく。
それを今の地球では、実感出来ないから、人は劣化していくんだよ。」
ああー嫌だねえと兄は嘆く。

「だからな自分で創造するんだよ。自分の世界や道を。
そうしたいと願うことも無いヤツは、人の作った道でもがけばいいんだよ。」
兄に言わせると、地球は既に自分の作りたい道を作る場所も無く、
おまけに鎖で縛られてしまい、
どうにもならないので興味がないのだそうだ。
「と、なるとどうなるんだよ。」

「地球を廃棄処分さ。それしかないだろう。
それが嫌ならリサイクルにでも出すんだね。」
ホウ、と僕は唸る。
「リサイクルなら実に良いじゃないか。
新たなよりよい形に再生するんだよ。」
兄は、アッそうか、と言って考え込んだのか黙った。
そして、いつものように、ピョンピョンと走り去って行った。

その前に
「おい、これから地球のリサイクルのことを研究する。」
と言いドアを閉めた。
僕は
「ああそうだな。」
と兄を見送った。
地球で何をするのかわからない兄も光が見えたかもしれない。
七夕の笹が揺れて、短冊があちこちに向いた。
兄弟でも道はそれぞれ
見るところが違うんだと言っている気がした。



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